電信文庫

シリーズ28 世界文化遺産 三角西港を訪ねて                                          電信文庫表紙ページへ

第一景 三角西港への旅の始まり  (2015年7月14日の動き)

 熊本空港に降り立ち、JR熊本駅へ向かうバスに乗る。バスでJR熊本駅まで行き、JR九州の電車に乗り換えて三角駅まで行くことになる。熊本の空港の名前は”阿蘇熊本空港”という。本来ならば”熊本阿蘇空港”なのだろうが、熊本という地名より阿蘇の方が名前が売れているから”阿蘇熊本空港”となったのであろう。その内に、”クマモン空港”になるかも知れない。空港は阿蘇の麓の位置にあり、高台を削って造られているため、雲が下りて霧が掛かることもある。
 この日も雨で曇り空のようだ。バスは出発の時には、ほぼ満席で60人ほどの人が乗っていた。私は手荷物一つだけなので直ぐにゲートを出られた。さほど待つこと無く来たバスに乗れ、窓側に座わった。しかし後から乗ってきて、隣に座った男性が強烈な香水をを付けている。これには参った。本人は付けている臭いは気にならないだろうが、隣に座わられた人は、迷惑この上ない。とりあえず呼吸を浅くして、臭いをあまり嗅がないようにする。最近、帰り際に事務所のロッカー室に入ると強い香水の臭いが充満している。私と他の人とは帰る時間が大凡1時間ほどズレがあり、多くの人が帰った後であるのだが、その臭いは強く残っている。よっぽど蒔き散らしているのだろう。汗臭いのも嫌だが、香水臭いのもいただけない。また花粉症が流行している時期に、電車の中で近くに座ったおばさんが化粧のパウダーっぽい臭いをさせていることが時折ある。もうどうしようもない。そくさくとその場から逃げ出す。今回のバスの場合、席に30分ほどジーッと我慢して座っていたところ、前の方の席が空いて、隣に座っていた人が移動してくれた。私が青息吐息であったのを見ていたのかもしれない。やっと人心地付く。多くの乗車客は熊本市の中心部にある”通り町筋”で降りてしまう。そこを過ぎるともう2、3人ほどしかいない。さらに10分程して熊本駅に着く。
この旅を始める前に一応、三角線の熊本駅から出発する時間を何本かは調べていたのであるが、駅に行ってみるとその時刻が全く違っていた。また以前に来た時から駅の構造が変わっていて、昔は改札口を入った目の前のホームだったのだが、変わってしまった様だ。新しく設置された地下道を通って駅の反対側へ抜けて、2階分まで上がっ所に造られた新しいホームがそのホームになっていた。出発の時刻も違うし、ホームの位置も違う。また熊本駅は終点・始発駅になっているため、同じホームで反対に行く電車も同じホームを使用するものだから、余計にややこしい。そしてその電車が出発しないと、電光表示板に次の列車が表示がされない。また駅の改修中のため、出発時刻を書いた時刻表も見当たらない。これでは混乱してもしょうが無い。こういう事も、あっちへ行ったり、こっちへ来たりしてやっと判ったことだ。とりあえず遅れることを宿に連絡する。三角に着いても宿泊する部屋が無かったなんぞは、論外だからだ。電車は1時間に1本である。後は出発の時間まで、そのホームでじっと待つしか無い。

 JR三角線はほとんどの駅が無人駅である。しかも3両編成のワンマン運転で、下車の時に運転手が切符を受け取るようになっている。だから駅に着く毎に、客は前の方へ移動してくる。さすがに熊本駅と三角駅は始発駅と終着駅であるので駅員がいて対応してくれる。夜の11時頃、三角駅に着く。宿泊する宿の位置は一応調べておいたが、初めての場所であり、行ってみるしかない。薄暗い街灯を頼りに、この道だと思う方向に進む。間違っていれば駅に戻るつもりでいる。熊本駅で時間があれば夕食を取ったのであるが、前述したごたごたで夕食をまだ食べていない。さすがにお腹が空いてきていた。駅の前にあるコンビニに飛び込み、お腹に入れる物を買おうとしたが、御飯類は全くない。なんだか情けない夜になりそうだ。とりあえずザル蕎麦と菓子パンを買っておくことにした。駅から5分くらい歩くと宿の看板が見つかった。どうやら無事に付いた様だ。ホテルは自宅から探したが、数日後と期間が短かったため、熊本市及びその近郊で探したが見つからず、困ってしまった。まあ一応、三角に行くので三角の地元も調べて見ようとしたら、偶然に見つかった。ちょっと素泊まりで安すぎるので心配したが、素泊まりと思えば多少気に染まなくても、どうにかなるさと思い、決めたホテルである。玄関を入ると宿泊者全員の靴だと思われる数の靴で玄関先が埋まっている。それらを飛び越して板の間までジャンプする。着地した場所の目の前にカウンターがある。見ると鍵付の四角いアクリル棒に黄色いタックシールが張ってあり、そこに私の名前が書いて置いてある。誰かが持って行っても判らないだろう。なんだこりゃと思っているとおじいさんが出てきた。そこで手続きをしてもらう。宿泊料を渡すと、領収書が渡された。そして曰く「明日出発する時は、鍵をカウンターに置いてそのまま出て行ってください。」だと。言葉は丁寧だが、なるほど人件費と愛想が削減されている。
部屋に入ってみると
ベッドはセミダブルサイズのスチールパイプのベッドでその上に薄い綿マットが敷かれている。ユニットバス室に入って見るとあんまり安心出来るような設備ではない。トイレの水を流すレバーが普通は横に回るのだが、ここのは上下にも動く。軸が何かの理由で固定されておらず、力が入る方向にレバーが動き回転させづらい。お風呂場には普通のホテルのように歯ブラシ、髭剃り、櫛がビニールにパックされて置いてあるのは良いのだが、ボディソープやシャンプーは特大の透明なボトルに2/3程入っている。いつ頃から入っているのだろう。間の悪いことに、その色は緑色と青色をしていてドロリとした様子が苔やヘドロのように見えて、こういうのは使う気がしない。さすが素泊まり税込み2500円の部屋である。こういうものだと思うしかない。早く寝るに限る。

三角西港 天門橋遠景 三角西港 天門橋向こうの島々
写真説明:  左・右写真 天草五橋の一つ。天門橋。重要な航路に掛かる為、橋脚が高く設定されている。高い橋脚の間には橋の向こう側の小さな島々が見える。

三角西港 遠景 三角西港 護岸 
写真説明: 左写真 左手奥に見えるのが三角西港、右写真 西港北ゾーンの海岸護岸総延長は567m程になる。同じ石積みの護岸が続く。 

三角西港 浮橋事務室 三角西港 船が着く部分
写真説明: 三角西港の少し手前にある観光船用の吊り桟橋。左写真 中央の建物は管理棟。観光案内や切符を発券している。右写真は桟橋。遊覧観光船の船着場になる。 

三角西港 水路 三角西港 山側水路
写真説明:  三角西港にとって非常に重要なインフラ設備である水路が縦横に走っている。山からの湧き水や海の高潮などによる氾濫から市街を守るとともに、都市の排水路として機能している。計画当初から災害防止として想定された設備である。 



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