

(2012年10月22日 訪問)
Webで都の庭園の紹介する記事の中から、初めて清澄公園の存在を知りました。私は清澄という地名についても知りませんでした。しかしこの近くにあります越中島の名は本の中によく出てきますので知っていましたが、そこは海の中の島だと思っていましたので、このあたりは江戸時代には海だというように理解していました。清澄庭園の歴史を調べますと、江戸の頃に造られた様ですので、その頃は木も茂る陸地になっていたのでしょう。いろいろと調べていくと紀伊國屋文左衛門の名前が出てきました。この敷地が紀伊国屋文左衛門の所有する敷地であったようです。一時期隆盛を極めた紀伊國屋文左衛門も、その末期には破産状態になったとも伝えられていますが、実際の所は解りません。しかしそれらの財産が子孫に伝えられることはなかったのでしょう。この敷地も手放され、下総の久世大和守の下屋敷となり、その頃の作庭が原型になっていると言われています。明治の廃藩置県の後、大名屋敷は荒れ果ててしまいます。それを岩崎弥太郎(三菱グループの総帥)が買い取り、手を入れて整備し、会社の施設として使用していました。関東大震災の折、避難施設として解放され、多くの人の命を救った事から都に譲り渡され、現状の様になったようです。
現在元々の敷地が2分割され、有料の庭園と無料開放の公園に分かれています。これは六義園と同じ様に山を表す作庭部分(公園部)と、海を表す作庭部分(庭園部)として造られていたのではなかったかと思われます。 庭園の方を見ますと敷地の中心に池が造られ、その周りをゆったりと巡って景観を楽しむ形式を取っています。まず最初に気が付いたのは、やたらと表札が多いことです。磐の一つ一つにその磐の産出された場所が表札に記載されています。確かに見学者にはありがたいのかもしれませんが、風景を楽しむ人にとっては邪魔なものです。地下鉄の半蔵門線の清澄白河駅を出て清澄通りの交差点を渡って左に折れ、一本目の路地を入ると100m程で入り口に来ます。入園の手続きをして中に入ると、すぐに奇石と巨大な水鉢が目に入ってきました。怪奇な石と丸みのある石の水鉢の取り合わせが見学者の目を引きつけます。平日にも関わらず次々と入園者が現れて、この景色が目に入り、すぐに寄ってきます。当然写真撮影は出来ません。写真は後でということにしました。
左手に大きな建物がありその前が開けた庭になっているため、そこからの眺めが良さそうと思うのか、入ってくる見学者のほとんどの方がそちらへ行きます。ですので人のいない写真を撮りたい私は、結局人の行かない方向である、右手の方へ行くことになりました。左の方へ行くと、売店があり、その売店の前から少し下り、庭園部分になっています。すぐに大きな一枚岩2枚、斜にかけた石橋があり、その橋を渡ると、そこには前衛的な石灯籠がありました。普通の石灯籠は、形式に固まっていて私の好みではありません。しかしこの石灯籠は、自然の石のおもしろさを表現した柔軟な風采をしていますので、自然の風景の中に溶け込んでいるような気がします。
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入ってすぐの清楚な中庭 |
丸い手水鉢と奇岩 |
傘の大きな灯籠(左に長い傘) |
その島の反対側の橋を渡り、もう少し湖岸の道を行きますと、その先に滝組を表していると思われる石組みが見えてきました。小高い丘の右からは、玉石を並べて造られた渓流が滝壷まで流れ込んでいて、正面には、滝を表現する石が置かれ、水の激しく落下している様子を表現しています。その滝壺の当たりに飛び石が置いてあり、歩く道が造られています。
池の周りの道は、緩やかな曲線を描き、歩く人の心を穏やかにする道具の一つとして設定されています。くねくねと続く道は2m程の幅があり、砂岩の細かい砂を敷き詰めて造られています。しかしこの庭園で、最も私の興味を引いたものは、上部が平坦な大石を池の岸辺に十数個並べて、磯渡りという道を造って見学者を歩かせる道にありました。1m×2m程の大石が並べられて池の中へ歩いていけるのです。石が大きいため、安心感があります。子供を前に抱いたお母さんも磯渡りを楽しんでいました。石を渡っていると池に住む鯉や亀が寄ってきます。売店で餌を売っていて、見学者から何時も餌を貰っているのでしょう。そういえば先ほどスーパーの袋に餌を一杯入れたおじいさんに会いました。スーパーの袋から餌を少しずつ取り出して、鯉や亀に与えていました。私が磯渡りをしていると大きな鯉が手が触れそうになるまで近くへ寄ってきて、口を大きく開けてこちらを見るのです。その鯉の目と私の目が合うと”おい、お前は餌をくれないのか。”という鯉の気持が伝わって来るのです。こちらは恐縮して、小さい声で”すまんな。”と言ってしまいました。磯渡りの大石の並べられた先の対岸に、凉亭と呼ばれる建屋がみえます。凉亭自体は大したものではないのですが、これだけの景色の中に存在するだけで重厚な雰囲気を持っているように見えます。すぐに次の磯渡りの場所に出ます。そこでは岸辺の岩の表情が充分に楽しめます。荒々しい石組みの間に立ち上がる黒松の景色、また岩と草のコラボレーションが、硬い岩に情緒を添えて見せてくれます。
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対岸の枯山水(滝と川を表現) |
涼亭と渡り石 |
渡り石の続き |
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次に三つの面白い写真をお見せしましょう。 |
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イルカ石 顔を出しておねだり |
亀君おはよう、鴨さんも元気? |
木が腐った様な石と羊歯 |