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シリーズ23 東京の回遊式池泉庭園                                                       電信文庫表紙ページへ

第四景 旧浜離宮恩賜庭園を訪ねて (2012年9月12日 訪問)

まず新橋駅を出て東京湾側(東方向)へ向かいます。この当たりは開発が進んでいて、都市景観が全く変わってきています。道路を歩いていますと左右の部分がドライエリアになっており、2層分くらい低いところにオープンカフェがあったりしています。ですから自分が3階くらいのレベルにいるような感覚に襲われてしまいます。更にその上をプロムナードが通っていて、そこから湾岸鉄道ゆりかもめの駅と繋がっているのです。このような場所では、どこが地盤面か解らなくなって頭が混乱してしまいました。車は今歩いている道路面を走っていますので、ここが地盤面だと思うことにしました。駅から真っ直ぐに進んで、突き当たりを左手に折れてビルに沿って右側へ沿って歩きます。このビルに沿った部分付近には、長距離バスが数台止まっていますのでこの近くで乗客を拾うのでしょう。この前の様な大事故を起こさない様にして、乗客の皆さんには旅行を楽しんで欲しいと思います。バスが並んでいるところを過ぎると、今度は高速道路の工事を行っている場所に出ます。ちょうど交差点の所の工事で、かつ信号が3か所もあり、その信号を渡らないと目的地の浜離宮に着けないようです。それも工事を遣っているので、グルッと迂回する道になっていました。3つの信号を渡ると、掘割りを渡る御影石の綺麗な橋があって、そこが浜離宮の入り口となっていました。元宮内庁の管轄であったので、門扉も特に立派なのでしょう。扉は新しく作り直したようでピッカピッカしています。門扉を通って右側に案内所と発券場が有って、そこで入場の手続きを行います。その先にはデジタルの案内の機械を貸してくれる所があり、係の人が”無料ですからどうぞお持ち下さい”と進めていました。大きさはちょうどスマホ位の形と大きさをしています。むろん私は借りるつもりはありません。なぜなら自分の直感で見たり、感じたことを大切にしたいと思っているからです。どうしても解説を聞いてしまうと見たり感じたりすることが、その解説の内容で変わってしまう、また影響を受けたことすら気がついていないことが最も恐れなければならないと思っています。意見に流されたり、若しくは逆にその解説の意見に強い反発を感じて私の感性が狂ってくることを恐れるのです。ですから機器の借り出しについては丁寧にお断りして中に入りました。この浜離宮は甲府宰相松平綱重が甲府浜屋敷として作ったもので、その息子である綱豊が受け継ぎ、その綱豊が6代将軍徳川家宣になったときに甲府は幕府直轄となり、この庭園は将軍家の別邸となったのです。明治になると皇室の管理に移り、宮内省の管理する浜離宮と呼ばれる様になりました。それが昭和20年に東京都に下賜され、現在、東京都の管理する庭園となりました。この庭園の特徴は。2つの鴨場を持っていること。この庭園の水は東京湾と直結し、潮の満ち引きを引き込んで景観に添えていること。等が特徴になっています。 暫く平坦な場所を歩いて行きますと、途中には藤棚やカキツバタなどが植えられた水路の様な所に出ます。その突き当たり付近に新銭座鴨場があります。そこは一般人は中には入れませんでした。よく皇室の人たちが網を持って鴨猟をする映像がTVで紹介されますが、きっとそういうことが行われているのだろうと、勝手に想像するしかありません。そこから左手に進むと潮入の池に出ます。池の中には、いくつかの島を繋いで木の橋が架かり、池を横断できる様になっていますが、橋も建物も最近建て替えられたもので昔の趣を感じるのはほど遠い様に思われます。寧ろ池の端に生える松を見て、その姿の方に驚いてしまいました。根っこが現れるほど傾き、力学的モーメントを最大にした様な姿をしています。またここの池の縁には30cm程の玉石が無数に並べられています。これでもかと思えるほどの量があります。これだけの数、ほとんど同じ大きさの玉石があること自体、不自然な感じを与えているのです。何でそこまでやる必要があるのかと思うのです。その玉石の存在が却って自然の風景を壊している様に思えてならないのです。

旧浜離宮庭園 穏やかな湖畔の風景  旧浜離宮庭園 この木はどうしたの?  旧浜離宮庭園 同じ大きさの石が続く 
穏やかな湖畔の風景  この木はどうしたの?  同じ大きさの玉石が続く 
     
旧浜離宮庭園 海に続く水路  旧浜離宮庭園 白鷺が静かにたたずむ  旧浜離宮庭園 石による干潮の表現か? 
海に続く水路 白鷺が静かにたたずむ  石による干潮の表現か? 

さらに東京湾岸沿いに北へ進んで行きます。左手に掘りがあり、玉石の護岸、芝の中に植えられた中木の松、右手には芝生そして所々に樹木が植えられています。この様な同じ景色がしばらく続いています。時折、右手には東京湾の一部となる水路があって、船や倉庫など現代の建物が見えます。その海岸沿いには海へ向けられたベンチが並び、その前には係留された船や近代的な船が行き交っています。この庭園を訪れた人は、和風の庭園を見に来たのであり、その庭園に背を向けて東京湾を通る舟や倉庫群を見に来たわけではありません。なんでベンチを海の方へ向けて置いているのか解りません。折角であれば、庭園の眺めの良い場所に向け置いて欲しいところです。横堀をグルーッと回って松のお茶屋へ来ますと、お伝い橋の際にある松の根元に奇石がありました。人の手によってくり抜かれたような石ですが、わざと人の手でくり抜いて作った奇石をここに置いたとは思えないのです。お伝い橋の先には小の字島と呼ばれる島があります。何のことは無いのですが真ん中に少し大きめの3つの島があって、「小」のように見えることから名付けられたのだそうです。その3つの島を橋で繋いで、中島へ至る様になっています。その小の島の真ん中の島には藤の老木があってその木はもう半分ほどが腐り落ちたようになっていますが、木の勢いは衰えておらず天空を覆う様に葉を茂らせています。この樹木の生命力の偉大さを見た思いがしました。

旧浜離宮庭園 ここには洋風のイメージがある  旧浜離宮庭園 松と奇石 
ここには洋風のイメージがある  松と奇石 

一通り和風庭園を見ましたが、,案内図には別に広いお花畑が書かれていました。そこへ行ってみましょう。晩秋の今の時期では花を見せるのは難しいだろうと、期待半分で行ってみます。内堀に架かる橋を渡りますと、すぐに色鮮やかなお花畑が見えてきました。案内のパンフレッドによれば、黄花秋桜(キバナコスモス)のようです。しかし、花の色は黄色だけではなく、赤い花も結構あります。帰って調べたところ、チョコレート秋桜(チョコレート色)やストロベリーチョコレート秋桜(赤橙色)のものが混じっていたと言うことのようです。この花の美しさが今日の一番の見所になったのかもしれません。旧浜離宮への私の評価はあまり良くありませんでした。和風の公園として割り切ってしまえば、それで良いのかもしませんが、庭園としては物足りないように思えました。

旧浜離宮庭園 お花畑 黄花秋桜  旧浜離宮庭園 これなーに?  切り株 
お花畑キバナコスモス(黄花秋桜)  これなーに!   


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